いつもの場所から

大田誠翔

第1話たこ焼き屋

私は毎日ルーティーンのように学校とバイトを行き来する生活を送っていた。

唯一の楽しみはバイト終わりに駅前のたこ焼き屋に寄り話をすること。

たまに食べる事はあるけど、ほとんど話をする為に通っていた。

彼と出会ったのはその場所だった。

たこ焼き屋でバイトをしている先輩の友達だった彼がたまたま来ていたのだ。


「あっ、こいつ亮大」

「こいつ凛」

「こんばんは」

「こんばんは」

なんだかドキドキしながらいつもの場所に座った。

「凛どうした?」「口数少ないぞ」

意地悪そうに、ニヤニヤしながら先輩は言う。

「そんな事ないよ」「突然過ぎてびっくりして、何話していいかわかんないだけ」

「悪い、悪い」

「健、あんまいじめんなよ」

「はいは~い」

「いつもの事なんで大丈夫です」

「健にいじめられたらいつでも言っといで」


しばらく他愛もない話をしながらも、彼の事を見つめている自分に気付き戸惑った。

出会いって突然なんだと感じていた。

平凡だった毎日がドキドキする毎日に変わっていくようで、自然と笑みがこぼれた。


それから私は彼が居ないかとソワソワしながら駅前のたこ焼き屋へ通っていた。

会えるかどうかも分からないのにいつもドキドキしていた。

「凛。亮大来てるよ」

こっそり先輩は私に言った。

私の頬は真っ赤になった。

「お疲れ様」

「あっ、こんばんは」

「遅くまでバイトしてるんやな」

「学校が終わってからなんでそうなっちゃうんですよね」

「帰り遅くなるけど大丈夫?」

「あっ、はい。いつもなので」

「今日は亮大送ってけよ」

「そやな、ええよ」「心配やしな」

「大丈夫ですよ」

「送ってく」

しばらく話をした後彼が家まで送ってくれた。

彼と話をしながら帰ったはずなのに、ドキドキしていた私は何を話していたのか覚えていなかった。

「じゃあ、おやすみ」

「ありがとうございました」「おやすみなさい」


部屋に入ってからもドキドキがおさまらない私は彼を思い出しながらただボーっとしていた。

それからはいつも彼が送ってくれるようになっていた。

もちろん毎日ではないけど、彼がたこ焼き屋に来ることが増えていった。

平凡だった毎日、それでも楽しかった毎日に幸せな時間がプラスされた。

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