第13話 第三兵器(共依存の果てその3)

「……で? その『体』はどうします? フラれるより不味くないですか?」


 涙と湿気で曇った少女の眼鏡越しに、女性の足が見える――。


 ヒールの高いショートブーツに白いパンツを履いた長い足の上には、豊満なバストとスカイブルーの瞳を持つ美しい顔が付いていた。ついでに手入れの行き届いた腰まである金髪が、時折ふわりと風になびいている……。


「はい……」


 まるで危機感のない返事に「しっかりしてください!」と、金髪女性は少し苛立ちを見せた。


「『堀内亜理砂ほりうちありさ』さん、いいですか? 貴方は今『透明』なんです! 私以外、誰にも見えていないのですよ!」


 金髪女性の言葉終わりに、亜理砂の体をサラリーマンが通り抜ける。


「……あの、私は死んだのでしょうか? できればその方がありがたいのですが……貴女は『天使』ですよね?」


 亜理砂は『異世界や転生ファンタジーの世界」』を崇拝し、暇さえあれば該当小説を読んでいるので免疫があるせいか、現状を何となく理解していた。


 そして目の前に立つ、白い軍服を着た金髪美女の姿に「天使であってくれ」と心から願う。


「申し訳ないですが貴女は死んでいないし、私はで信仰されている、天使でも死神でもありません。強いて言えば、上官ですかね?」


「へぇ?」


 今度は間の抜けた江戸商人を思わせる亜理砂の返事に、金髪女性はクスリと笑った。


「私は『サフラ・グレイ』と申します。とりあえずその状態を治しましょう。まだコントロールが上手くできないのですね? 加えて精神に影響されやすい様です」


 笑顔を絶さずに、サフラが手を差し出す。

 亜理砂は涙と眼鏡を制服のシャツで拭い、やはり天使にしか見えない彼女の手を握った……。

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