第11話 第三兵器(共依存の果て)
亮二と樫木が初対面を終えた、同日――。
とある集合住宅の4階で、カーテンの隙間からそっと顔を覗かせる眼鏡の少女……。
窓から沈む太陽が見えるが、消え行く日の光を堪能する事が彼女の目的ではなかった。
近所にある公立中学の制服を来たまま、眼鏡少女はもうかれこれ30分もの間、外への集中を一切逸らすことなくその時を待っていた。
そこから更に数分後、彼女は窓に鼻先がくっつくギリギリ迄、顔を近付ける。
その様子をただただ見守るのが、彼女の日課だ。
『今日は笑ってたね! 昨日は少し落ち込んでいるみたいだったから、心配したよー』
『制服のリボンはどうしたの? 付けていなかったけど……失くしてないよね? もし汚したり破れたりしたなら言ってね! 直してあげるから!』
そうスマートフォンにメッセージを書き込み送信――しかし、今日も昨日も一昨日も相手からの返信は無い……。
避けられている事に最初は戸惑いもあったが「いつか私の思いは理解してくれる……今はちょっとした反抗期なんだ!」と、眼鏡少女は前向きに関係修復を図っている。
しかし彼女の「そのうち」期間は、既に1年が過ぎようとしていた……。
本日の「見守り」は終了。
共働きで帰りが遅い両親を待ちつつ、作り置きのおにぎりにかぶりつく。
ふとスマートフォンに目をやると、1通のメッセージが届いていることに気付いた。
『明日の放課後、いつもの公園に来て。話そう』
黒縁眼鏡を外した後、長い前髪をかきあげて天井を仰ぎ、彼女は満面の笑みを浮かべた……。
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