02.正しき道は苦難の道
――長い螺旋階段を上り切り、新たな階層へと続く扉を開いた俺達を待っていたのは、実に意外なものだった。
「――扉の向こうに……また扉?」
そう。扉を開けた先は小さな部屋になっており、そこにはまた別の扉が姿を現していた。何とも意味深な構造だが……。
「待ってホワイト君、ここに何か書いてあるわ」
アーシュの言葉に目をやると、新たな扉の表面には何やら文字が刻まれていた。
古代王国時代から使われている共通語で書かれたそれは、大体こんな内容だった。
『正しき道を選択した者達へ告げる。
ここより続くは、上層への最短の道である。
しかし、この道は同時に苦難の道でもある。
引き返せば、緩やかだが果てしなく長い
どちらを選ぶかは諸君らの自由である。
だが、この扉を開けば引き返す道は断たれ、後戻りは出来ない。
選択は一度きりである……』
「――何とも。この地下迷宮にしては親切な事だが……果たして鵜呑みにして良いものかね?」
扉の文言を読み終えたドナールが、俺とアーシュに意見を求めてくる。
ドナールが疑問に思うのも無理はない。往路で散々に俺達を苦しめてきた地下迷宮の仕組みを考えると、これも一種の
「この扉と後ろの扉の間には、魔力的な繋がりを感じるわ。このメッセージを信じるなら、恐らくこの扉を開けると、戻る方の扉にはロックが掛かる仕組みじゃないかしら? 確信は持てないけれど……」
「もしくは、この扉が一方通行な仕組みになっているか、ですかね」
その後、色々と調べて分かった事だが、どうやら俺達が入って来た後ろの扉をきちんと閉めると、目の前の扉のロックが解除される仕組みになっているらしかった。
となると、目の前の扉を開いている間は、逆に後ろの扉は開かない仕組みになっている可能性が高い。両方を開いておく事は出来そうにない。
そして、扉のメッセージを信じるならば、目の前の扉を一度開けてしまうと、何らかの形で後戻り出来なくなってしまう……。
――話し合った結果、俺達は先へ進む事を決めた。扉のメッセージを信じる事にしたのだ。
今の俺達にとって最も強大な敵は、何より「時間」だ。
俺の持っている「魔法の水袋」で水分は補給できるが、食べるものは俺が非常用に持っていた干し肉数切れしかない。三人で分け合っても、良くて三日程しかもたないだろう。
「緩やかだが果てしなく長い道程」が、どの程度の長さなのかは分からない。だが、最下層まで往路で三日間かかったこの地下迷宮の規模を考えれば、同程度かそれ以上の道程になる可能性があった。
――ならば、短期決戦となる方に賭けてみよう、という結論に達したのだ。
「では、開けます!」
念の為、床にリサ達へ先に進んだ旨を伝えるメッセージを刻んだ上で、俺達は目の前の扉に手をかける
そのまま、祈るような想いで鉄扉を開けた俺達を待っていたのは――地獄だった。
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