第43話 まともに満足できません

『料理』……美味しい料理が作れるスキル。相手の胃袋を掴めるということは、家庭や組織における地位向上に大変役に立つ。どんな生き物でも空腹だとイライラしがちなので、落ち着いて話し合うためには必須スキルと言える。これで離婚の危機も回避できる。よく調理場に立つ男はモテると言われるが、それでモテる人は多分調理場に立たなくてもモテる。世の中は不公平である。この料理は出来損ないだ、食べられないよ。




 魔王という仕事は好き勝手やっているように見えるが、存外ストレスがたまる。

 頂点に立っているはずなのに部下が好き勝手をすると胃が痛くなってくる。

 魔物というのは暴れるのが本業みたいなので、統率が取りにくくて困るな。


「仕方がない。少し気分転換をするか」


 ケルちゃんと戯れる以外のストレス解消法は一つしかない。


 まず、ある場所に行く。


「ふふふ。今からたっぷり痛ぶってくれるわ!」


 自分の相手を品定めしながら辺りを回る。

 同時に拷問に使う道具も選別する。

 余裕の態度で相手をたっぷり脅迫するといい。

 この時しっかりと気持ちを込めるのが大切だ。

 親の仇くらいに思った方が良い。


「自分の無力さを思い知るがいい!」


 セリフを言いながら相手の体を刻む。

 これでもか! これでもか! と刻む。

 できるだけ細切れにする。

 後々に響いてくるからな。


「ぬおおおおおっ!!!」


 そして思いっきり叫びながら、渾身の力でぶちのめす。

 何度でも叩く。

 たとえ相手がミンチになろうとも止めてはならぬ。

 情など一切不要だ。


「我が魔法で焼き払ってくれるわ!」


 自慢の魔法で相手を炎熱地獄に追い込む。

 相手は泣いて懇願してくるかもしれないが無視する。

 むしろ相手の体が焼ける音を楽しむくらいの気持ちで行く。


「ワハハハハッ!! とうとう観念したか!」


 相手が身じろぎもできず、無事料理されたら完成だ。

 文句がない。

 完璧な仕上がりだ。


「魔王様、料理で遊ぶのはお止めください」


 メイド長のアリサに叱られてしまった。

 ハンバーグの出来は良かったと思う。




――――――――――――――――――――――――

魔王様への意見具申コーナー

Q あまり下の者の仕事を取らないでください。失業してしまいますので。 メイド長アリサ


A う、うむ。以後、気をつける。それにしても魔王城はストレス解消の道具が少ないように思われるのう。いっそのこと、人間のようにカジノでも開くか?

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