第35話 まともに威厳保てません

※今回よりしばらくの間、魔王様サイドの話になります。

  ご了承ください。



『カリスマ』……相手に対し畏敬の念を抱かせ、心服させるスキル。生まれ持っての部分が大きく占めるスキルだが、努力によって勝ち取ることもできる。上に立つ者として無くてはならないスキルだが、あったらあったで常に下の者に対し結果を出し続けなければならない。これがブレイクされると、人によってはギャップ萌えを生み出すらしく許される場合がある。うー。





――暗黒大陸 魔王城――


 魔王とは魔族の頂点。

 魔王とは絶対者。

 故に、魔王とは強くなくてはならぬ。


「全ての者よ! 我を称えよ! 我を崇めよ!」

「うおーーーっ!! 魔王様!」

「魔王様! 万歳!!」


 魔王城のテラスから姿を現わせば、魔物の歓声に包まれる。

 中庭は埋め尽くさんばかりに魔物がひしめいている。


「ワハハハハハ!! 良いか? 人間を根絶やしにせよ!」

「うおおおおおお!!!」


 ふふふ。テンションはMAXだ。これぐらいで良いだろう。

 近くにいた古参の部下、死神に声をかける。


「爺よ。我は自室に戻るぞ」

「畏まりました」


 颯爽とマントを翻しながら自室へ戻る。

 自室へ戻って、ドアを閉めたところで――

 へたり込む。


「ああ……このキャラ辛い……」


 正直キツイ。

 私はどちらかと言えば平和主義なのだ。

 なのに魔王をやっている。

 それもこれも


『旅に出るので探さないでください 父より』


 などという置手紙をして父上が行方不明になったからだ。

 恨みますよ、父上。

 はあ……母上が生きておられたら何と言ったか。

 油断すれば下剋上上等の魔物の世界。寝首をかかれかねないし、心の休まる時がない。

 癒しがあるとすれば――


「わふっ!」

「ケーーールちゃーーーん!!」


 愛犬のケルベロスと戯れるときだけだ。

 ああ! 可愛いな、お前は!


「おお、よしよし! 私の味方はお前だけだなあ!」

「わふわふ!」


 覆いかぶさって私にじゃれてきた。

 頭が3つあるから色んな方向から顔をなめてくる。

 ああ! 癒されるなあ!


「ま、魔王様……あの……」

「ハッ!?」


 いつの間にか部屋のドアが開いており、部下が覗いていた。

 マズイ……このままでは、とてもマズイ。


「いいか!? 人間は根絶やしだぞ!!」

「いえ……その格好で言われましも……」


 ケルベロスにマウント取られた状態で言っても意味はなかった。

 とりあえず死ぬほど脅して口を塞いでおいた。





――――――――――――――――――――

魔王様への意見具申コーナー

Q 幼少の頃よりお世話をしている身としては、魔王様がご無理をなされていないか心配でたまりませぬ。困った時はいつでも、この爺をお便りくださいますよう申し上げます。 死神より


A 済まぬ爺よ。心配をかける。だが魔王の息子として生まれた以上、私はやらねばならぬ。それが宿命なのだから。

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