第34話 まともに恫喝できません

『威圧』……自分の周囲に気をぶつけることにより、相手を威嚇するスキル。このスキルを扱う者は、その身にオーラを纏まとっているとか。場合によっては、とてつもなく大きく見えるかもしれない。このスキルがあれば、相手に敵わないと理解させ不要な戦闘を避けることができる。でもレベル上げには不向き。また遠くからでも気配を察知できてしまうため、思わぬ強敵を引き寄せてしまうかもしれない。加減が難しい。大盤振舞し過ぎると、触れるもの皆傷つけてしまいかねない。




 最寄りの町まで道は遠く険しい。

 いや、別に険しくはないが遠い。


「そういえば、以前から勇者様に聞きたいことがあったのですが……」


 クレアが突然言い出した。


「何を?」

「いえ、勇者様と結構長いこと一緒に旅をしているのですが、あまり魔物に出会わないな、と」


 まあ確かに、あまり出会っていないな。

 108柱やらと戦ってはいるものの、ほとんど出会わない。

 いや、平和な世の中だな、とは思ったんだけど。


「まあ、俺が勇者だからだろ?」

「そういうものでしょうか?」


 勇者だから襲われない、というのも楽観的な話だが。


 そんな話をしたせいか、道中襲われた。

 盗賊に。


「おお? テメエら金出せや」

「へへ……痛い目見たくねえだろ?」


 3人で徒党を組んでオラついてくる。こいつら、勇者パーティーに喧嘩売ってるって分かってんのか?

 メイシャあたりは呆れている。


「どうすんだい、勇者?」

「待て。ここは俺に任せろ」


 悪党死すべし慈悲はない、とやってもいいが無益な争いは極力避けるべきだ。

 スキル『威圧』を試みる。


「あ~ん? テメエら喧嘩売ってんのか? あ?」

「勇者様、それはちょっと違うのでは?」


 クレアにツッコミをもらった。

 あれ? ウチの学校の不良はこんな感じだったけどな。

 じゃあ、こうか?


「尻から手突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたろうか?」

「それも品がないですね」


 今度はクラウスからツッコミを受ける。

 お前ら、結構言いたい放題だな。

 では、最終手段な。


「はい」


 その辺の岩を軽くパンチする。

 岩は轟音を立てて砕け散る。


「ば、化け物だ!」

「冗談じゃねえ! 逃げろ!」


 一目散に逃げ出す盗賊たち。

 失礼な。

 いいか? お前らの世界は、その化け物に救われるんだぞ?


「人間も一枚岩なら良いのですが」


 クラウスの言う通り。

 人間が悪人も善人も一丸となって魔物に対抗できればいいのにな。

 この際、使えるものは何でも使いたいよ。

 俺はそう思った。




――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q 人と人が争うのは悲しいと思いませんか?


A とても悲しいことですね。人は互いに手を取り合って仲良くしてほしいものです。せめて話し合いで解決できれば良いのですが。旅は順調でしょうか? 勇者として頑張りどころが続きますが、女神はいつでも応援していますよ。

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