第33話 まともに休憩できません

『疲労耐性』……どんなに動いても、働いても疲れないスキル。過労死が問題になっているこのご時世に、リアルで『24時間戦えますか?』ができてしまう。ただ疲れないだけなので、のどが渇いたり、お腹が空いたりはする。あと気疲れは無いけどイライラしたりはするかもしれない。疲労回復にドリンク剤を飲む人も多いと思うが、飲んでる時についどんな成分が入っているのか成分表をマジマジ見てしまうあなた。その時点で『飲んだら効く』という、ドリンク剤のマジックにかかってますよ? あの成分表は何とも言えない説得力がある。




 翌日、新天地へ向けて出発することになった俺たちであるが――


「やっぱり、罰ゲームはあるんですねえ」

「あります」


 クラウスに断言された。


 昨日のノゾキの一件の罰を俺はしっかり受けていた。

 今、俺の背中には女神のリュックサックがある。

 それにヒモを引っかけてソリに繋いで、その上に大量の荷物を乗せる。

 すなわち、今の俺はすべての荷物を運んでいる。

 おお! こうすれば俺だけでも荷物が運べるじゃないか!

 いや、これ考えたクラウス天才。流石! ちくしょー!


「ま、因果応報だねえ」


 メイシャは怒ってるっていうか、呆れている。

 クレアは我関せずである。


「次の町まで如何ほどで?」


 俺はそっと尋ねてみた。


「たった150km程です。勇者殿なら一息でしょう?」

「遠っ!?」


 たった、じゃねえよ!

 北極横断するワンコだって少しは休むよ?

 俺の待遇、ワンコ以下?


「俺、疲れないけどお腹は空くから」


 一応それだけは宣言しておく。

 勇者だって人間だよ? それを忘れないでね?


「大丈夫ですよ勇者様。3食はちゃんと付きますから」

「食事と言えば、そうだクラウス。一つ考えて欲しいことがあるんだけど」


 君の優秀なブレーンで。


「何でしょうか?」

「あのな俺、現状食事が犬食いなんだわ」


 器持てない。

 スプーン持てない。

 もちろん食べ物持てない。

 今までよく文句も言わず食ってきたよ。


「それで俺にもまともに食べられる方法があったら知りたいんだ」

「……一つあります」

「え? あんの?」


 もう、あるの?

 流石ですわ、賢人様!


「まず長いスプーンを用意します」

「え? でも食事介助は俺、自動回避しちゃうよ?」

「いえ直接使うのではなく、スプーンに食べ物を乗せて」

「ふんふん」


 それで、どうするの?


「てこの原理を使って食べ物を飛ばします」

「おい!」

「それを口でキャッチしていただければ……」

「結局、犬じゃねえか!?」


 クゥ~ン。

 傷ついた。

 賢人がイジメるよう。




―――――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q 食事は寝ころんで上から落としてもらうのが手っ取り早いかもしれません。30%で成功します。


A それだと食材の3分の2が犠牲になる気がしますが。自動回避が発動できない袋小路に追い詰めるというのも手かもしれませんね。まあ、多分壁を破壊してしまうと思いますが。女神の棺桶とか作れば良かったですかね? ごめんなさい。

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