第31話 まともに披露できません

『歌』……様々な効果を持った歌を歌うことができる。古来より歌には力があると信じられている。その真偽は文明が発展した今でも歌が歌われていることからも分かる。気持ちを落ち着かせたり、逆に高揚感を感じたり、元気にしたり。歌を歌いながら歩くと疲労軽減の効果もある。だからって歌いながら戦わなくても、とは思う。たまにボエーッとやって物を破壊したり、恋の三角関係がこじれたりするので注意が必要。でも人の生活とは切り離せない。ノーミュージック、ノーライフ。まさに文化の極み。




「只今より美人コンテストを開催いたします!」


 アナウンサーの言葉で幕が開けた。観客は男どもで埋め尽くされている。

 ああ、これは見られる方もキツイな。


 「今大会における意気込みをお願いします!」


 いきなり当てられて俺は少しキョドる。


「え、え~と精一杯頑張ります」


 とりあえず無難な受け答えに終わった。

 周りからはヒューヒューッ!! と歓声が上がったり

 勇者様ーー! と声が聞こえたりする。

 こら、お前ら! そーゆー応援をするんじゃない。


 美人コンテストは意気込み、容姿などの審査を経て歌の審査に移って行った。

 正直、俺には持ち歌など無い。


「では、お願いします!」


 え? そんなこと言われても……何を歌えばいいんだよ?


「じゃ、じゃあ『大きなのっぽの古時計』で」


 何でその歌をチョイスしたのか?

 俺にもよく分からない。

 当然、伴奏など無いので全部俺が1人で口ずさむ。

 静かな空間に俺の声が染み渡っていく。

 ああ、これは拷問だ。

 早く終わってくれ。


「す、素晴らしい!!」


 無限とも思える時間が終わると、辺りは歓声に包まれた。

 どうも俺の歌には色々と効果が付加されているらしい。

 そこも評価されたようだ。

 俺は顔面が真っ赤だったと思うが。

 とにかく無事優勝することができた。


「いやー良かったねえ。中身は何だろか?」


 賞品として貰った宝箱の中には、黒くて細長くて先が……一言で言って電気のケーブル。パソコンに繋ぐような電源用のコンセントケーブルが入っていた。また、謎アイテムだよ。


「ふむ。何でしょうかね?」


 クラウスは頻りに触って確かめていたが、流石の賢人様でも分からなかったご様子。

 そりゃ、そうだ。オーパーツだろ、それ。

 不思議がるクラウスを横目に俺はメイシャに言った。


「賞金の方はメイシャにあげるから」

「えっ!?」

「弟妹たちに何か送ってあげて」


 俺はそう伝えた。




――――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q またオーパーツです。そのうちパソコンとか組み立てるんでしょうかね?


A 古の力を呼び起こすのに必要だとか言われています。エイシェントパワーというものですかね? 私も詳しいことは分かりません。いい物です。大事になさってください。

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