第22話 まともに確保できません

『サバイバル』……野外において生きていくのに必要な知識や技術が身につくスキル。これがあれば食べ物の知識はもちろんのこと、毒や薬にも詳しくなり生き字引になれる。獲物を狩ったり、火をおこしたり、水を確保する技術も身につく。町中と違い、野外においては天候・気温・怪我、その他様々なことに気を付けなければならないため、知識や技術のある無しで生存率が大きく変わる。ピクニック気分で野外に行ってはならない。常に安全には気をつかおう。ちなみに余談ではあるが、縄文時代の人間は1日2食だったそうな。人間の歴史はサバイバルの歴史でもある。




 首都を出発した俺たちは、王様の話にあった賢人に会うべく行動していた。

 地図を見るとだいぶ僻地に住んでいるようだ。1週間ほどかかりそうである。


「随分と離れてますね。食料は足りるでしょうか?」

「最悪、現地調達だな」

「海沿いを行くから釣り竿でも持ってくればよかったねえ」


 メイシャの言う通り海沿いの道を行く。山よりも平坦な道のりだ。

 身体的には楽だが――


「先に水が尽きた」


 出発して4日後、食料よりも先に水が尽きた。当然周りに人家はなく、川や泉もない。ここは『サバイバル』スキルを活かすべきだ。大切なのは知識だぜ!


「どうしますか、勇者様?」

「しょうがない。海水淡水化だ」


 海水淡水化とは、海水を真水にすることである。方法は色々あるが、ここは最も原始的な蒸留にしよう。


「メイシャ、その辺から大きめの葉っぱを取ってきてくれないか?」


 鍋に海水を入れ火にかける。その上に蒸気を受け止める葉っぱを斜めに設置する。サランラップなんか無いからこれで何とかする。冷えて落ちてくる水を容器で受け止める。これの欠点はエネルギー効率が悪いことだが……


「わはは! 俺の有り余る魔力をもってすれば、いくらでも火が熾せるぜ!」

「女神様に感謝しなきゃ駄目ですよ?」

「というか単純に暑いね、この作業」


 そう、暑い。ひたすら暑い。汗だくになる。手に入れる水分以上の水分を体内から失っているんじゃないか?


 過酷な作業は夕方まで続き、何とか飲み水の確保に至る。


「よし! 作業終了! 何とかなったな」

「なあ勇者。一つ思ったんだけどさあ。あんた、攻撃魔法全部使えるんだろ?」

「ああ」

「氷魔法使って氷作ってさ、それを溶かしたほうが早かったんじゃ……」

「…………」


 大切なのは知識をどう使うかである。

 そんな当たり前のことを俺は失念していた。




――――――――――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q 女神さまは普段何を食べているんですか?


A 大体の神様は食事をしません。でも私は甘いものが好きです。ドーナツとか食べると幸せな気分になれます。『パンがなければお菓子を食べればいい』と言いますが、私は菓子パンが好きです。パンもお菓子もなければ困ります。

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