第21話 まともに納得できません

『ステータスカンスト』……自分の能力を表すステータスの数値が上限に到達していること。普通に考えれば、どんなに才覚を持った者でも人生の全てを懸けて1、2個カンストするのがやっと。すべての数値がカンストしているというのは、もはや人ならざる者の介入があるとしか思えない。鰻の職人だって『串打ち3年、裂き8年、焼き一生』である。何かを究極まで極めるのは難しい。




 洗脳騒ぎをとりあえず収めた俺たちは、この国の王様と謁見し話をすることにした。


「成程、相分かった。城下町の治安の強化と女神教への報告はこちらからしておこう」

「ありがとうございます」


 王様は話の分かる人だった。テキパキと兵士に指示を出し、事を済ませてしまう。

 それが終わると再びこちらを向いて話を続ける。


「さて、勇者よ。この国には一人、賢人がおる。」

「賢人?」

「うむ。少し頭の固い男だが、きっとお主の力になってくれよう。訪ねてみるといい」


 王様は賢人の場所が書かれた地図を渡してくれた。今は少しでも手掛かりが欲しいから助かるな。


「それと、これも渡しておこう」


 そう言って王様は兵士に物を持ってこさせる。

 持ってきた物――

 それはリュックサックであった。


「これは女神の加護を受けた鞄だ。遠慮なく持っていくといい」

「何から何まで、ありがとうございます!」

「うむ! 健闘を祈っているぞ」


 王様との謁見を終えた俺たちは城下町で荷物の整理をしていた。


「いやー、これでようやく俺も荷物が持てるな」


 女神の加護を受けたリュックサックは俺が触っても壊れなかった。荷物を3人で分割して運ぶことができる。


「苦労が報われました」

「これで女、子供に荷物を持たせる鬼畜を卒業できるねえ、勇者?」


 ホントにご迷惑おかけしました。

 でも女神さまにも問題があるんですよ?

 初期装備に鞄を追加してもらえれば、ここまで難儀することはなかったと思う。

 あるいはステータスをカンストさせないで、もうちょっと調整していただければ……。

 まあ、今更なんですけどね。




―――――――――――――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q 女神の加護って、どうやって授けるんですか?


A いい質問ですね。結構難しいんですよ、これ。まず、加護を与えたい物に名前をつけて可愛がります。次に愛情を注ぎながら大切に使用します。愛着が湧くまで馴染んだら完成です。そう、女神の加護を受けたものは全部、私のお古です。コアなマニアには人気があるみたいですよ? そのせいか世界中に散らばってます。

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