第13話 まともに看過できません

『真実の目』……真実を見抜く目。これがあれば、どんな幻であろうと隠された嘘であろうと見抜くことができる。戦闘においては、どんな敵にも騙されない比類なき安定感を発揮する。反面、すべて見えてしまうためドッキリやサプライズが味わえない。初めから見えているため、「ああ、なんだ。そういうことか」と興ざめになる。そういう人は目を閉じて他の感覚を研ぎ澄ませてみるんだ。内なる何かが目覚め、小宇宙が爆発するかもしれない。






 王都にいた俺達は比較的近くにある村が魔王の手先に襲われたという話を聞きつけ現場に急行した。



 そこは――



「何にも起きてませんね?」

「平和そのものだね」



 クレアやメイシャは呑気のんきにそう言った。俺はしばらくの間呆然としていたが、気を取り直して村の中央に歩いていく。



「本当にのどかな村だな」

「子供たちが元気に走り回ってますね」



 俺は吐き気を抑えながら二人の会話を聞く。人影が近づいてくる。



「おや? 旅の方? いや、勇者様ですかな?」

「あなたは?」



 ギリギリのところで俺は受け答えをする。正直限界が近い。



「私はここの村長です」

「そうですか。村長、一つお願いがあるのですが……」



 俺は普通にしゃべった。魔法は発動しない。どうやら効かないようだ。



「まあ、立ち話もなんですから……」



 村長と名乗るものは背を向けて歩き出す。



「いえ、すぐに終わるんで」

「勇者様? いくらなんでも……」



 クレアの制止も聞かず、俺は素早く剣を抜くと村長の背中に突き刺した。



「ギャアアアァァァァ!!!!」

「ちょ、勇者! 一体何してんだい!?」



 メイシャは焦りの声を上げる。

 しかし次の瞬間、村長だったものが段々と魔物の姿の変わっていく。



「これは!?」



 クレアも驚きの声を上げる。



「グッ……!? ナゼダ……ナゼ、バレタ?」

「いいから、くたばれよ外道が!」



 俺はもう一度剣を突き刺す。断末魔の叫びを上げて魔物は絶命した。



「こ、こいつは……」



 メイシャの顔が青ざめていく。どうやら原因となる魔物を倒したお陰で村の風景が現実の風景に変わっていくようだ。俺には初めから見えていたが……。



「ひどい……」



 目の前の風景。牧歌的な風景など微塵もなかった。

 燃えさかる家々。

 うず高く積み上げられた村人達の死骸。

 地獄絵図がそこにはあった。



「勇者様には初めから見えていたのですね」

「ああ、どうやら俺には幻とか嘘とか通用しないらしい」



 しばらく呆然としていたメイシャであったが、ふと気がついて慌てて胸を隠した。

 いや、初対面の時から気付いてました。あなたの胸のパッドは。



 それにしても魔王め……。

 絶対許さん。






―――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q 魔王は絶対許さない。


A あの……それは質問でしょうか? きっと何かがあったのですね? 女神はとっても心配です。女神は見守ることしかできません。でも、あなたがそう決めたのですから、きっと成し遂げるのでしょうね。女神はいつでも応援してます。

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