第12話 まともに指摘できません

『鑑定』……物の価値を判定する能力。これがあればどんな古い物であっても、誰も知らない物であっても価値を正しく理解することができる。商人が持っていたら巨万の富を得ることだって不可能じゃない。安く買って高く売る、それが商売の基本。




 街に宝を持ち帰った俺達は人を一人雇った。腕が良いと自分で言うトレジャーハンター、メイシャだ。女のトレジャーハンター。念願の女性だよ。やったね。


「アタシに任せておけば間違いないよ!」


 その自信を証明するかのごとく町に落ち帰った宝箱をあっさり開けてしまった。大変有能。


「これは何でしょうか?」


 クレアが中身を取り出す。それは小さな長方形をしている。先端部分はおそらくキャップになっていて外れるだろう。


「ここは取り外せますね……」


 クレアがキャップを外す。中から銀色の突起が出てくる。と言うか、それはUSBメモリーだった。なんでこんなものが?


「ははーん、これは……」


 USBを眺めながら、メイシャが理解したような声を上げる。ほう、これが何か分かるのか。


「これはきっと最新式の武器だね!」

「そうなんですか、メイシャさん!?」

「アタシぐらいの一流トレジャーハンターになれば分かるものさ!」


 驚きの声を上げるクレアと自信満々のメイシャ。武器として……使えなくもないけど……多分すぐ壊れる。


「『鑑定』」


 俺は一応鑑定してみることにした。


 物体名 USBメモリー


 使用用途 データを記録する記憶媒体

      パソコンなどの電子機器に繋いで使用する。


 記憶容量 32ギガ


 価値 1000円~2000円前後


 うん。俺が知ってるUSBメモリーと1ミリたりとも違わない。まったく違わない。


「あのさ、メイシャは目利きに自信あるの?」


 俺はさりげなく聞いてみた。


「もちろん! アタシが身につけている物を見れば分かるでしょ?」


 そう言ってメイシャはネックレスやら指輪やらを見せてくる。


「『鑑定』」


 ネックレス 真珠のネックレスの偽物

 価値    銅貨3枚くらい


 指輪    ダイヤの指輪のイミテーション

 価値    銅貨5枚くらい


「あのさ、メイシャそれいくら位で買ったの?」

「金貨5枚! 格安よね!」


 うん。人生勉強になったと思えば格安だよね。


「ところでさ、メイシャ」

「何よ?」

「この先、道中で手に入った宝は大体あげるからさ……」


 幸せになってください。俺はそう思った。






――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q USBが手に入ったんですけど、どこで使うんですか?


A それは旅を進めると分かると思いますが、それまで捨てずに保管しといて下さいね。旅は順調でしょうか? 困ったら色んな人の話に耳を傾けてくださいね。その姿勢がとても勇者らしいと女神は勝手ながら思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る