桃太郎~彼がくれたもの~

桃太郎~彼がくれたもの~

定年後、特にやる事もなくだらだら生きる日々。

何度も何度も芝を刈るだけ。

何度も何度も洗濯物を洗うだけ。

今日もそれの繰り返し。

だと思っていた―。



「あーすることないのぉ」

「芝刈りは機械のおかげでサクサク終わるし、あまりにもすることがなくて、最近英会話教室に行き始めたんじゃよ。第二の人生、いやこれからが人生の醍醐味なのかもしれんなぁ。…おや?」


「こら美味そうなももが実ってらぁー。近所の秀雄さんが育ててたもも、一個くらい貰ってもいいかのぉ。できれば大きな桃がいいなぁ。」

「Wow!!大きいと言っても、流石に大き過ぎるべこれ!まぁせっかくだしこのももこっそり頂くかのぉ悪ぃねぇ秀雄ちゃん」

「さっそく愛しのマイハニーにみせるべ!」


ガチャ

「ハニー!帰ったぞ…ハニー!!!」

「あっ、ダーリン!これは違うんです!あの、その」

「ハニー!!まさか浮気をしていたなんて…」

「待ってくださいダーリン!」

「ハニー…残念だよ…」

バタン


「うっ…ハニー…どうしてじゃ…うっ…」

ぽたん

「Wow!どうなってるんじゃ!桃が溶けていくぞ!おやっ!?中から人間が出てきた!こんな入浴剤みたいな感じで!?」

「Hello Good morning grandfather.」

「喋っとる!しかも英語じゃ!」

「日本語も話せるよ!驚かせてごメンチカツ!僕はぁ桃から生まれた妖精さん!みんなのアイドル桃太郎くんでーす!」

「…どう返したらいいか分からんな…とりあえず名前は桃太郎なんじゃな。」

「えっと本名はぁー山田光宙でぇーす!」

「Oh my God」

「ていうか僕鬼とかいうのを倒したいんだけどー?」

「鬼?そんなもんより婆さんの浮気相手を倒してくれんか?」

「えーなんか鬼って悪いって感じするっしょ?これ倒したら正義のヒーローじゃね?」

「鬼倒したら女も寄ってくるかのぉ!」

「うっしゃ!男二人で頑張ろうぜウィーッ!」

「なんかキャラ変わってないかのう…」

「あと団子とか持ってくらしいぜ」

「団子ー?それじゃあ近くのスーパーで買ってくるかのぉ」



「なんかまじド田舎笑笑」

「馬鹿にするんじゃないぞ!」

「さーせん。あ、あれじゃね?」

「どこじゃ」

「なんかあの家だけ豪華じゃね?鬼って宝みたいのいっぱい持ってんじゃん。ていうことは金持ちじゃん。ていうことは家豪華じゃん。」

「なるほど!確かにそうじゃ!あの家に鬼が住んでにいるに違いない!」


「オラ!鬼!倒しに来たぜ!!」

「金と女はわしのものじゃ!!」

「団子だ!おりゃっ!…ちょ…蓋開けて、棒から外して…ちょっとジジイ!なんで三色団子買ってきたんだよ!」

「団子といえば三色団子じゃろ!それよりなんだか車がいっぱい止まっとるぞ」

「えっ?」

「ちょっと何すんだよ!」

「住居侵入罪で逮捕する」

「なんでじゃ!ただわしらは金と女…鬼退治したかっただけじゃ―!!」


こうして桃は人々に様々な不幸をもたらすものとして今でも恐れられています。





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