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『馬鹿なことをいうな。俺は恋などしない。……いや、俺が恋をしているのは九人の美少女達……』


『クックッ、無理をするな。どうやら図星だったようだな。冷静沈着なジュナが取り乱すとは、幽体となり初めて本気の恋をしたようだな』


『ハカセっ! いい加減にしろ』


「ハカセどういう意味?」


 あたしはハカセに問い掛ける。


『ヴァンパイアも心底好きな相手は吸血出来ないものだ。あの本橋でさえ、そこの男に吸血出来なかった』


 ハカセは澄斗を指差し、ニヤリと笑った。


「本橋さんが……本気で澄斗を……?」


『そのようだ。吸血するチャンスはいくらでもあっただろうに、一滴も吸血されていない。すなわち、幽体であるジュナも同じだよ、本気で恋をした相手の魂を抜くことなど出来ない。

 だが、よく考えたものだ。事前に本橋の人物画を用意するとは、お前も策士だな』


「始めから……あたしの人物画なんて描いてなかったの?」


 唐沢先輩はあたしの質問には答えなかった。


『十人目の人物画をふいにした代償は大きい。ジュナ、地縛霊の呪いを解くことは出来なかったようだな。それを承知でお前は本橋に罠を仕掛けた。本橋が美術室に乗り込むことを、ちゃんと計算していたんだ』


「唐沢先輩……。本当なの? あたしを描いて下さい。そうしたら……唐沢先輩の呪いは解ける……」


『流音、お前はまだ気付かないのか? お前を絵画に封じ込め、十人の美少女を天に召し己が生き返っても、ジュナには何の意味もないんだよ』


 ハカセの言っている意味が、あたしには理解出来ない。唐沢先輩の呪いを解けるなら、あたしは死んでも構わない。


『ハカセ、もうそのくらいでいいだろう』


『はいはい、鈍感な女子に何を話しても通じないからな』

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