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 あたしと澄斗はヘナヘナと床にへたり込む。


『ジュナ様……。あのような者を絵画に封じ込めても、ジュナ様の呪いは解けないのに……なぜ……』


 絵画の美少女達から、シクシクと泣き声が漏れる。


『風見流音、私達と約束したはずよ。約束通り、今すぐジュナ様のモデルになりなさい!』


『そうよ! ジュナ様に身も心も捧げなさい!』


 絵画は一斉にガタガタと額縁を揺らし、彼女達の声が聞こえない澄斗は肩を竦め恐怖心を露にしている。


 俺様だけど霊的なものに対してはヘタレな部分がある澄斗。


 その澄斗が……

 地縛霊や本橋さんから、あたしを守ってくれた。


『みんな騒ぐな。流音はモデルにしないよ。俺が求めている十人目は、心身ともに清らかなだ。流音は理想とはかけ離れている』


「……っ、唐沢先輩? それはあたしを貶してるの? 美少女でなくて悪かったわね」


 唐沢先輩は意地悪な笑みを浮かべている。


 パタパタと美術室の天井を飛んでいた蝙蝠が、ハカセの姿へと戻る。


 ハカセは黒いマントで身を隠し、澄斗にその姿は見えてはいない。


『やはりハカセは死んでいなかったようだな』


『当たり前だ。この俺様を誰だと思っている。わけのわからぬ新種のヴァンパイアに、この俺様が殺られるわけがない。鼠捕りに掛かっていたのは、本物の鼠だ。流音、お前は俺のために泣いてくれた。だから俺はお前を助けたまで』


「ハカセ、焼却炉で本橋さんとのやり取りを見ていたの……?」


『ああ、全て見ていたよ。ヴァンパイアの王だと名乗る如何様いかさま野郎を突き止めるためにね』


『心配させやがって』


『ジュナ、お前が俺を心配したのか? 九人の命を奪い人間の心を失ったお前が、人を思いやるとはな。冷血なお前が変貌するとは。まさか……誰かに恋でもしたのか』


 ハカセの言葉に唐沢先輩は何故か慌てている。

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