162
それは鬼気迫る本橋の声だった。
ドンドンと激しく叩かれるドア。その衝撃を封じるように俺達は複数のボードをドアの外から打ち付ける。
それでも多勢に無勢だ。
二人でドアを封じるには限界があった。
流音の秘策が何なのか、俺にはわからない。だけど今は流音と美術室に棲みつく幽霊に頼るしかなかった。
流音が美術室に飛び込む。
美術室のドアが閉まった。
「開けなさい! そこにいるのは空野君と伊住君ね。我らの王の怒りが体に伝わってくる。こんなことをしても、我らを倒すことなど出来ないのよ!」
「さぁそれはどうかな。お前達が崇める王は、何者かにやられていたよ。もう生きていないかもしれないな」
「嘘よ!? 一体誰に……!?」
生徒会室の中では狂ったようにドアをドンドンと叩く音がした。室内からはこの世のものとは思えない叫び声も聞こえる。
「一体……奴等は何なんだよ。化け物か!?」
伊住はドアを封じながら、俺に問い掛けた。
「人間じゃねぇことは確かだな」
教師を倒した黒谷は、新聞部の部室から体育祭の種目で使うネットを取り出し、気絶した教師をネットに入れ動きを封じた。
「生徒会室は俺と伊住が封じる。空野は美術室に行け!」
「わかった」
俺は黒谷と代わり、美術室に走った。美術室のドアを開けようとしたが、ドアはびくともしない。
流音……!?
『決してドアを開けたり、話しかけたりしないでね』流音の言葉を思い出す。
「流音! 流音!」
『さようなら』永遠の別れのような流音の眼差しが頭を過り、不安にかられた俺は流音の名を呼びながら何度もドアを叩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます