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 それは鬼気迫る本橋の声だった。


 ドンドンと激しく叩かれるドア。その衝撃を封じるように俺達は複数のボードをドアの外から打ち付ける。


 それでも多勢に無勢だ。

 二人でドアを封じるには限界があった。


 流音の秘策が何なのか、俺にはわからない。だけど今は流音と美術室に棲みつく幽霊に頼るしかなかった。


 流音が美術室に飛び込む。

 美術室のドアが閉まった。


「開けなさい! そこにいるのは空野君と伊住君ね。我らの王の怒りが体に伝わってくる。こんなことをしても、我らを倒すことなど出来ないのよ!」


「さぁそれはどうかな。お前達が崇める王は、何者かにやられていたよ。もう生きていないかもしれないな」


「嘘よ!? 一体誰に……!?」


 生徒会室の中では狂ったようにドアをドンドンと叩く音がした。室内からはこの世のものとは思えない叫び声も聞こえる。


「一体……奴等は何なんだよ。化け物か!?」


 伊住はドアを封じながら、俺に問い掛けた。


「人間じゃねぇことは確かだな」


 教師を倒した黒谷は、新聞部の部室から体育祭の種目で使うネットを取り出し、気絶した教師をネットに入れ動きを封じた。


「生徒会室は俺と伊住が封じる。空野は美術室に行け!」


「わかった」


 俺は黒谷と代わり、美術室に走った。美術室のドアを開けようとしたが、ドアはびくともしない。


 流音……!?


『決してドアを開けたり、話しかけたりしないでね』流音の言葉を思い出す。


「流音! 流音!」


『さようなら』永遠の別れのような流音の眼差しが頭を過り、不安にかられた俺は流音の名を呼びながら何度もドアを叩いた。


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