【17】封印と風隠

澄斗side

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「みんな! 逃げて!」


 保健室から飛び出した流音。保健室の中で獣のような叫び声を上げ、平沼先生が見えない何かと戦っていた。


 その目は赤く光り、その口は大きく開き鋭い牙を剥いた。


 それは今まで目にしていた穏やかな平沼先生とは、まるで別人だった。


 見えない何かに弾き飛ばされるように、平沼先生は何度も宙に浮き壁に激突する。そして開け放たれた窓から転がるように落下した。


「澄斗、何してるの! 早く!」


「わかった! 伊住、黒谷、生徒会室を封じるんだ!」


「わかった!」


 俺達は一斉に階段を駆け上がる。踊り場から階下を見下ろすと、職員室から出て来た教師達が、無表情で俺達を見上げた。


 ゆっくりではあるが、両手を前に突き出し、一歩また一歩と階段を上っている。


「伊住急げ! 生徒会室から本橋達を出してはいけない! ここは俺に任せろ!」


 黒谷はニヤリと口角を引き上げると、四階のトイレからモップを取り出し、階段の踊り場に立った。


 俺達に襲いくる教師陣を、モップを自由自在に操り、次々と倒した。


 俺と伊住はその間に新聞部の部室である生徒会室の倉庫から、ボードと工具を取り出し、生徒会室のドアを外から封じた。


「流音は美術室へ急げ!」


「うん。……みんなありがとう。あたしがみんなを必ず助けるから。必ず……。さようなら」


「……流音?」


『さようなら』って、どういう意味なんだよ?


 流音? どういう意味なんだよ?


 生徒会室の中から、ドンドンとドアを叩く音がした。


「誰なの? ドアを開けなさい!」

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