159
ドアをノックすると、平沼先生の優しい声がした。
「どうぞ」
あたしは三人に視線を向け、一人で室内に入る。
「風見さん、今朝はどうした? 体調でも悪かったのかな?」
「平沼先生すみません。健康診断があること知らなくて。先生一人ですか?」
「そうだよ。身長体重、視力検査、問診。健康診断と言っても、眼科医や内科医の検査は事前に済ませているから、保健室では簡単な検査と、生徒の心の不安をケアすることが目的だ」
「……そうですか。平沼先生……あたし……」
「風見さん。視力検査するから、これで片眼隠してその白線に立って」
「……はい」
専門医がいないなら、特にする必要もない検査だ。
それなのに……
わざわざどうして……。
「全校生徒を先生が一人で診てるの?」
「そうだよ。一年A組から順次行った」
「平沼先生、この学園の生徒の様子……おかしいと思いませんか?」
「おかしいとはどんな風に? みんな普通だよ、異常はない」
優しい声が、次第に歪んでいく。
生徒の様子を身近で見ているはずの先生が、この異様な光景を正常だといい放つ事態、正常ではない。
白線に立ち片眼を隠したあたしの後ろに平沼先生は立ち、視力検査表のランプを押す。
「輪の切れてる箇所を言って」
「……右」
カチ、カチ、と画面は切り替わる。
「……上、……左」
平沼先生があたしの髪に触れた。髪を掬い上げ首筋に触れた。
背筋がゾクッとし、言い知れぬ恐怖を感じた。
平沼先生があたしの首に触れている。撫でるように指が上下する。
「ひ、平沼先生……」
「白くて透き通るような美しい肌だね。この皮膚の下に綺麗な血液が流れているんだろうな」
――ま、まさか……
平沼先生が……!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます