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 ドアをノックすると、平沼先生の優しい声がした。


「どうぞ」


 あたしは三人に視線を向け、一人で室内に入る。


「風見さん、今朝はどうした? 体調でも悪かったのかな?」


「平沼先生すみません。健康診断があること知らなくて。先生一人ですか?」


「そうだよ。身長体重、視力検査、問診。健康診断と言っても、眼科医や内科医の検査は事前に済ませているから、保健室では簡単な検査と、生徒の心の不安をケアすることが目的だ」


「……そうですか。平沼先生……あたし……」


「風見さん。視力検査するから、これで片眼隠してその白線に立って」


「……はい」


 専門医がいないなら、特にする必要もない検査だ。


 それなのに……

 わざわざどうして……。


「全校生徒を先生が一人で診てるの?」


「そうだよ。一年A組から順次行った」


「平沼先生、この学園の生徒の様子……おかしいと思いませんか?」


「おかしいとはどんな風に? みんな普通だよ、異常はない」


 優しい声が、次第に歪んでいく。


 生徒の様子を身近で見ているはずの先生が、この異様な光景を正常だといい放つ事態、正常ではない。


 白線に立ち片眼を隠したあたしの後ろに平沼先生は立ち、視力検査表のランプを押す。


「輪の切れてる箇所を言って」


「……右」


 カチ、カチ、と画面は切り替わる。


「……上、……左」


 平沼先生があたしの髪に触れた。髪を掬い上げ首筋に触れた。


 背筋がゾクッとし、言い知れぬ恐怖を感じた。


 平沼先生があたしの首に触れている。撫でるように指が上下する。


「ひ、平沼先生……」


「白くて透き通るような美しい肌だね。この皮膚の下に綺麗な血液が流れているんだろうな」


 ――ま、まさか……

 平沼先生が……!?

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