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「受けてないのは俺達四人だけ? 健康診断なんて事前に聞いてないし」


 伊住君が本橋さんに疑問をぶつける。確かにその通りだ。


 今月の日程表に健康診断なんて書かれてはいない。


「とにかく、放課後、保健室で健康診断を受けて下さい」


 あたしは澄斗に視線を向ける。『取り敢えず逆らわない方がいい』、澄斗の目はそう言っているように思えた。


「わかった。放課後健康診断を受ければいいんだね」


 伊住君も澄斗に同意するように頷く。黒谷君は無言で本橋さんを睨んだ。


 一限目は数学だったのに、道徳に変わっていた。だけど授業の内容は道徳とは全く異なっていた。


「人間とはいずれ地球を滅ぼす悪の化身なり、この地球を支配できるのは、永遠の命を与えられた者達の使命である」


 数学教師が語気を強め、黒板を叩く。


 先生も生徒も一体どうなってしまったんだろう。


 こんな授業を一日中受けていると、正常な者でも頭がおかしくなりそうだ。


 教師の中に、一人くらい洗脳されていない人はいないの? 柿園先生もすでに本橋さんの意のまま。


 そうだ……。


 保健室の養護教諭、平沼先生ならあたし達の話を聞き、味方になってくれるかもしれない。


 平沼先生は、洗脳されていない。


 あたしはそう信じ、放課後になるのをじっと待った。


 ◇


 ―放課後―


「空野君と風見さんは健康診断のあと生徒会室に来てほしいの」


「生徒会室?」


「定例会合よ」


「また?」


「何か不満でも?」


「……いえ」


 あたし達は本橋さんの指示通り保健室に向かう。定例会合なら本橋さんが保健室に来ることはない。

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