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「唐沢先輩がきっとみんなを救ってくれるわ。放課後、もう一度ここで見張りをして欲しいの。美術部の部員も、柿園先生も美術室にはいれないで」
「美術部員や先生も? わかったよ」
大切な儀式をするんだ。
邪魔者は美術室には入れない。
納得がいかない澄斗を尻目に、あたし達は教室に向かう。教室に入ると生徒は視線を正したまま無表情で前だけを見つめていた。
「おはよう」
澄斗は伊住君と黒谷君に視線を向ける。
「千秋、小春、おはよう」
あたしは親友である二人に声を掛けたが、すでに洗脳されている二人は、あたしに目もくれず前を見据えたままだった。
まるで……
蝋人形のよう……。
必ず……
二人の洗脳も解いてあげる。
「おはよう空野君、風見さん。今日は遅かったのね」
本橋さんがあたしに視線を向けた。
「部活だよ、コンクールが近いからね。なかなか筆が進まなくて……」
「そう。柿園先生に朝の自主活動は禁止されてるはずよ」
本橋さんはあたしに鋭い眼差しを向けた。
「……だよね。ついうっかりしていたわ。以後気をつける」
「そういえば伊住君、黒谷君、空野君、風見さん、保健室の先生があなた達を捜してたわよ」
「俺達に? 何だろう」
「あなた達、健康診断受けてないでしょう」
「健康診断? いつあったの?」
伊住君があたしに視線を向けた。そんなことあたしも知らないよ。
思わず首を左右に振る。
「今朝早く保健室で実施されたの。四人ともいなかったから、平沼先生が放課後保健室に来るようにって」
放課後?
それは行けない。
放課後、あたしは唐沢先輩と……。
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