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 澄斗が美術室を出たあと、あたしは唐沢先輩に視線を向けた。


『流音、どうした? 空野と行かないのか?』


「あたし……今日は唐沢先輩にお願いがあって来たの」


『お願いとは?』


「彼女達から全てを聞きました。唐沢先輩が地縛霊に呪いをかけられたことも……」


 唐沢先輩が少し怒ったように絵画に視線を向けた。


『晶子が話したのか?』


『ジュナ様ごめんなさい。ジュナ様をお守りするために、黙っていられなかったの』


『お喋りなやつだな』


 唐沢先輩に叱咤され、絵画の美少女達がシュンと項垂れる。


『それで、流音の要件はなんだ?』


「あたしを絵画のモデルにして下さい。あたし、十人目のモデルになりたいの」


『流音……。本気で言っているのか? 俺のモデルになるということが、どういう意味を持っているのかわかっているのか?』


「わかってるからこそ、言ってるの。唐沢先輩はあたしに言ったよね。あたしがコンクールの絵画を描き終えたら、次はあたしにモデルになれと」


『あれは……』


「あたし怖くないよ。それで地縛霊の呪いが解け唐沢先輩が現世に甦り、この学園の生徒を守ることが出来るなら、あたしの命なんて惜しくない」


 あたしは真新しいキャンバスを取り出し、唐沢先輩に差し出す。


「あたしを十人目のモデルにして下さい。お願いします」


『それは出来ない。以前とは状況が違う』


 唐沢先輩は絵筆を握ろうとはしない。


「何が違うの? 同じだわ! どうしてあたしじゃダメなの!」


『流音……』


 唐沢先輩は黙り込む。


「もう時間がないの。本橋さんを操るヴァンパイアは、教師を洗脳してる。この学園は地縛霊やヴァンパイアに支配されたも同然なのよ」


『やはり本橋か……』


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