153
「澄斗は学校のことや、生徒会のこと話したの?」
「話してないよ。俺の母親なんか本橋のこと『本当にいい子ね、素直で優しくて、母さんもあんな娘が欲しかったわ』なんて、毎日褒めまくってるんだから」
「成る程ね、本橋さんの悪口なんて言える状態じゃないね」
「俺達四人以外はみんな本橋や転校生に洗脳されてる。もしかしたらその生徒や教師が、みんなの家族も洗脳しているかもしれない。だとしたら、学校の異変は外部には漏れない」
「そうだね。大丈夫、あたしが必ず阻止するから」
「阻止するって、どうやって?」
「あたし唐沢先輩と話をするわ。あたし達に力を貸してもらうの」
「だからどうやって?」
「澄斗は美術室の外を見張ってくれればいい。決してドアを開けたり、話掛けたりしないでね」
「まるで民話みたいだな」
澄斗はぶっきらぼうにそう答えると、重い段ボール箱を学校まで運び、美術室の中に置いた。
『流音、随分早いな』
「唐沢先輩おはよう。約束通り、絵画をお返しします」
澄斗が段ボール箱を広げると、絵画は一枚ずつ箱から飛び出し、唐沢先輩の頬にチュッてキスをすると、美術室の壁に自ら張り付いた。
ふわふわと浮かぶ奇妙な絵画の動きに、澄斗は目を丸くして見つめている。
「澄斗、本橋さんや先生が来ても、話が終わるまで廊下で足止めして欲しいの。決して誰も中には入れないで」
「わかった。流音、外で待ってるからな」
澄斗の眼差しに、胸が熱くなる。澄斗ともう逢えないかもしれないと思うと、涙が溢れそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます