【16】策略と錯略

澄斗side

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 流音からの電話を切った俺は、流音と絵画の美少女がかわしていた会話を思い出す。もちろん聞こえていたのは、流音の話だけ。


――『あたしはただ……あなた達を守りたかったから。あなた達はただの絵画じゃない。魂が宿ってる』


――『唐沢先輩の呪いを解く? どういう意味?』


――『唐沢先輩が……甦る? 生き返るってこと?』


 あの絵画には、美術室の幽霊をこの世に甦らせる秘密が隠されている。


 美術室の幽霊は呪いをかけられ、その呪いを解く鍵が絵画にあるとしたら……。


 流音は絵画に封じ込められた少女達と、何か約束を交わした……。


 何かって、何だよ。


「あー……! 訳わかんねぇ!」


 ベッドに横になったまま、頭をグシャグシャと両手で掻く。


 そういえば、転校生が来てから本橋は、朝俺を誘いに来なくなった。本橋の部屋は確か404号室。


 深夜、こっそり家を出てエレベーターに乗り込み四階で降りた。通路の照明がカチカチと点滅している。


 電球が切れかかっているようだ。


 エレベーター側から401、402、やはり構造は五階と同じ。五階には504はない。末尾に4のつく号数はない。


 403……


「どうしたの? 空野君」


 403の玄関に差し掛かった時、背後から声を掛けられた。


「……本橋さん」


「あたしに何か用?」


「最近、家に来ないからさ。深夜に……どこに行ってたの?」


 本橋は頬を緩め、口角を引き上げ笑みを浮かべた。薄気味悪い笑みだ。


「生徒会のことで気が張っているから、気晴らしに散歩していたの。もう空野君や風見さんのお宅にはお邪魔しないわ」


「……そう」


 こんな時間に……

 一人で散歩……?


「空野君、あたしに何か隠してる?」


 本橋が俺に近付く。

 俺に抱きつき、耳元で囁いた。


「あなたもこちらの世界に来たいの?」

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