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「……唐沢先輩を……助けて」
瞼を閉じたまま、やっとの思いで声を絞り出した。体は金縛りにあったみたいに、動かない。
『それはあなたが十人目のモデルになると、解釈してもいいのね』
「そうよ……。だからお願い……」
『ああ、ジュナ様の声が聞こえるわ。みんなも聞こえるでしょう。ジュナ様が私達の名を呼んでいる。さぁ……ジュナ様の命令に従いましょう』
夢の中で、壁に張り付いていた絵画が、一枚ずつゆっくりと壁から離れていく。
ふわふわと宙を浮き、次々と段ボール箱の中に収まった。
『流音、彼女達と何を話していたんだ?』
「唐沢先輩……? ここにいるの……?」
でも……
夢の中に、唐沢先輩の姿はない。
唐沢先輩は美術室に閉じ込められている。唐沢先輩が壁を上手くすり抜け、ここにいるとは思えない。
でも……
彼女達の心を動かしたのはあたしじゃない。
彼女達は……
唐沢先輩の命令にしか従わないから…。
――「わあっ!!」
夢から覚め、体を起こす。
クロスに張り付いていた絵画は全て外れ、段ボール箱の中に綺麗に収まっていた。
すぐにガムテープで蓋を閉め、澄斗に電話で知らせた。
そして、伊住君と黒谷君に対する不信感も伝える。
『伊住と黒谷は色々あったけど、あれは誤解だよ。彼等は俺達の味方だ』
「そんなことわからないわ。味方の振りをしてこの絵画を焼却するつもりかもしれない。あたしがもし居なくなっても、澄斗が絵画を守ると約束して」
あたしの様子に澄斗は驚いている。
『……その絵画にどんな意味があるのかわかんねぇけど、必ず守ると約束するよ』
「ありがとう澄斗。絵画を美術室に戻したら、唐沢先輩と二人きりにして欲しいの。唐沢先輩と大切な話があるんだ。だから誰も美術室に入らないように廊下で見張ってて欲しいの」
『二人きりに?……わかったよ』
唐沢先輩の秘密。
地縛霊にかけられた呪い。
学園を守るためには、その呪いを解くしかない。
学園を……
いやこの世界を……
地縛霊やヴァンパイアから救うことが出来るのは、最強の霊能力を持つ唐沢先輩しかいないから。
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