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ハカセを死に追いやったのも、地縛霊の封印を解くきっかけを作ったのもあたし……。
あたしが十人目となれば、唐沢先輩にかけられた呪いは解け、唐沢先輩はこの世に甦る……。
「おい、流音何を話しているんだよ? 呪いとか生き返るとか一体何のことだよ? 教えろよ」
澄斗が心配そうにあたしを見つめた。
「あなた達を焼却させたりしないわ。あなた達を地縛霊なんかにさせない。だから、あたしに力を貸して」
『私達に力を貸せと? 笑わせないで。私達はジュナ様の命令にしか従わないわ。だけど、あなたが私達の条件を受け入れるなら話は別よ』
「……条件?」
『あなた、ジュナ様に人物画のモデルになって欲しいと言われているわよね』
「……はい」
『その意味、わかるわよね? ジュナ様があなたを最後の一人に選んだ。あとはあなたがそれに応じるまで。あなたが命を捧げると約束するなら、私達は美術室に戻ってもよくてよ』
それはあたしが自ら死を受け入れ、自身の描かれた絵画に魂を入れることに承諾するということ……。
「流音! 説明しろ!」
澄斗は少し苛立ったように声を荒げた。
「澄斗、少し黙ってて。今彼女達と話をしているの」
「彼女達が嫌がっているのなら、俺が自力で壁から絵画を引き離すまでだ」
澄斗は乱暴に一枚の絵画を掴む。
『やだ、野蛮ね。まるで獣みたい。そんなことをしても壁から離れなくてよ。私達はジュナ様の命令に従うのみ』
「……っ、何で離れないんだよ!」
「澄斗やめて。彼女達には意志があるの。この絵画は生きているの。乱暴にしないで」
澄斗があたしを見つめ、絵画から手を離した。
「あたしに任せて、必ず月曜日の朝までには、箱に入ってもらうから」
「そんなの不可能だよ」
澄斗は半ば諦めたように、自宅に帰った。
―土曜日、深夜未明―
眠れない私……。
彼女達の話し声がする。
でも、瞼は重く開かない。
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