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伊住君と黒谷君は美術室を出て、新聞部の部室へと入る。二人が何を目論んでいるのか、あたしにはわからない。
あたしと澄斗はキャンバスに筆を動かすことなく美術室を出る。
「澄斗……」
「流音、話はマンションに帰ってからだ。俺達が盗聴器を仕掛けたみたいに、誰かに聞かれている可能性もある」
「そうだね」
あたし達は黙ってマンションまで歩いた。背後からヒタヒタと足音がする。
背筋がゾッとするくらい寒い。あたし達の周りだけ、空気が冷たくなっていくのがわかる。
本橋……さん……!?
思わず振り返ったが、そこには誰もいなかった。
マンションに戻った澄斗は、自分の家に帰らず、あたしの家に入る。
母は外出していて不在だった。
「流音、上がっていい?」
「もちろんよ。澄斗に聞いて欲しいことがあるの」
あたしの部屋のドアを開けると、一斉に九人の美少女が口を開く。
『遅いわね』
『何をしてたの?』
『こんな狭い部屋はうんざり』
『ジュナ様の元に戻して』
『ああ、愛しのジュナ様……』
『やだ、私のジュナ様よ』
『それより……何か不吉な胸騒ぎがするわ』
『まさかジュナ様に何か危険が?』
『私達を美術室から遠ざけるから、ジュナ様に災いが起きたのね!』
「待って、一度に話さないで。災いってなに? 唐沢先輩があたしにこう言ったの『あの転校生の正体は地縛霊だ。あの桜の木の根元に空いた穴が、霊魂を封じ込めた地底へと通じる入口に違いない』と。
地縛霊って何? どうして地縛霊が蘇ったの? あなたたち何か知ってるんでしょう」
一番最初に描かれた美少女が口を開く。
『知ってるわよ。私達はジュナ様に忠誠を誓った同志。あなた、何も知らずに私達をこんな場所に連れて来たの? 焼却されて火だるまになることを救ってくれたことは感謝するわ。
でも何もわかってないのに持ち出すなんて、信じられない』
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