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「俺がヴァンパイアだって? くだらねぇ」


 黒谷君はあたしににじり寄る。伊住君があたし達をたしなめた。


「二人とも、そんなことより体育館に急ごう。四人がいないことが先生に知れたら、きっと変に思うから」


「そうだな。流音、体育館に行こう」


 澄斗に腕を掴まれ、思わず唐沢先輩に視線を向けた。


 伊住君や黒谷君を信用したわけではない。だけどあたし一人では無力だ。


 唐沢先輩を守ることも、学校の生徒を守ることも出来ない。


『流音、空を見ろ。黒い雲が体育館を覆っている。行かない方がいい』


「……えっ?」


『邪気を感じる。不吉な前兆だ』


 美術室の窓から見える空は、黒い雲に覆われ太陽の光を遮断していた。


 今にも雨が降りそうだ。


「……でも」


 唐沢先輩の声は誰にも聞こえない。


『流音行くな。ここにいろ。君は俺が守る』


「流音、何してんだよ。早くしろ!」


 あたしは澄斗に腕を捕まれ、美術室を出る。唐沢先輩の言葉が耳から離れない。


「学校の生徒はみんな正気とは思えない。まるで魂を吸いとられ生気を失っているように見える。俺達四人が何を話しても通用する相手じゃない」


 伊住君の話は的を得ている。


「伊住、どうすればいいんだよ」


「洗脳されている振りをするんだ。暫く様子をみよう」


「そうだな、それが唯一危険を回避する方法かも知れない。みんな演じろ」


「演じる? 簡単なことだ」


 黒谷君があたしを見て笑った。


「ただし、一人を除いてな」

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