流音side
129
翌朝、いつもの登校時間より、一時間早くあたしは澄斗と学校に向かった。
「まじ、ねむっ。つうか、学校入れんのかよ」
「運動部や吹奏楽部が朝練してるから入れるに決まってるよ」
眠いのはあたしの方だ。
絵画が気になり、頭から布団を被ったが、彼女達はずっとお喋りしていて、煩くて一睡も出来なかった。
だから、さっきから欠伸ばかりしている澄斗に、ちょっと苛つく。欠伸したいのはあたしだってば。
「ふぁーっ」
「澄斗、煩い!」
プンプンしながら校舎を見上げると、四階の窓から唐沢先輩の姿が見えた。
「唐沢先輩……」
「唐沢? アイツがいるのか?」
澄斗が四階の窓を見上げた。やはり澄斗には見えていないようだ。
「澄斗、早く行こう」
あたしは澄斗の手を引っ張る。
校舎に入り四階に駆け上がる。美術室のドアを開けると窓際に唐沢先輩が立っていた。
唐沢先輩の髪が風に揺れている。
『おはよう、流音。彼女達のお喋りで眠れなかったようだね』
「唐沢先輩おはようございます。よくわかりましたね」
『彼女達は毎夜ずっと喋り続けているからね。それに流音の目の下にくまが出来てる』
「くま!? やだ!?」
「なぁ、流音。幽霊が何か言ってんの? 熊がどうかしたのか? 幽霊の次は害獣?」
『幽霊とは失敬なやつだな。俺のことをコイツに話したのか?』
「ごめんなさい。どうしても唐沢先輩と話がしたいっていうから……」
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