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『おほほ、ほらご覧なさい。嫌われた』


「……っ」


 美少女達の絵画を自宅で預かると安易に考えていたあたしは、その考えが甘かったことを悟る。


「やっぱり無謀だったのかな」


「お前さ、さっきからなにぶつぶつ言ってんの」


「何でもないってば」


 澄斗は文句を言いながらも、絵画の入った段ボール箱を自宅の部屋まで運んでくれた。


 クローゼットの中に箱のまま納めようとした途端、文句の嵐だ。


『あぁ、息苦しい。早く箱を開けなさい。まさか、このまま箱にずっと閉じ込めてる気じゃないでしょうね。私達は呼吸してるのよ。窒息するでしょう。早く開けなさいよ!』


 呼吸……!?

 絵画が呼吸!?


 まさか……?

 冗談でしょう?


 箱から出せって……

 あたしの部屋に九枚の絵画を飾れっていうの!?


「お前、変だよ。大丈夫か? 箱開けるぞ」


 澄斗はガムテープをバリバリと音を立てて剥がす。


「待って!」

『さっさと開けて!』


 絵画の美少女と声がハモり思わずムカつく。


「ここはあたしの部屋よ。あなたに選択肢はない」


『だからなに? 私達を預かるって言ったのはあなたよ。それとも、あれはジュナ様に気に入られるために、口から出任せだったの?』


「あたしはあなたたちのことを思って言ったまで。焼却炉に放り込まれたら可哀想だと思ったからよ。預かるとは言ったけど、部屋に飾るなんて、一言も言ってないよ」


 澄斗が目を丸くし、あたしを見つめた。


「流音、お前大丈夫か? 精神ヤられてるぞ」



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