121

「澄斗乱暴に扱わないでね」


「人に持たせて、文句が多いんだよ」


『あなたが乱暴だからでしょう。ジュナ様なら私達のこと、宝石を扱うように大事に抱き上げてくれるのに。だから人間の男子はいやなのよ』


 ……ていうか、唐沢先輩もみんなも元々人間だから。


「お前さ、放課後伊住と何を話してたの?」


「別に……」


「二人でこそこそ話してたよな」


「澄斗には関係ないでしょう。それより……黒谷君だけど、彼は危険だよ」


「危険って?」


「ライター持ってた。煙草吸うのかな。不良だったって噂は本当だったみたい」


「黒谷がライター? 何かあったのか?」


「別に何もないよ」


 澄斗はあたしの幼なじみだけど、あたしの敵なのか味方なのか最近よくわからなくなってきた。


「お前さ、俺に何か隠してるだろ」


「だって、何を話しても信じてくれないでしょう。だからだよ」


「お前が非現実的なことばっか言うからだよ」


「お前、お前って煩いな。あたしは、お前って名前じゃありませんから」


『煩いのはあなたの方よ。少しは静かにしたら。そんな態度だから、男子にモテないのよ。乱暴者だけど、彼に同情しちゃうわね』


「ガタガタ煩いな!」


 箱に向かって叫んだのに、澄斗が逆切れした。


「ガタガタ煩いって何だよ! お前な、たいがいにしろよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る