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「うあー!!」
「きゃあー!!」
前方の窓は閉まっている。
明らかに霊的なものを感じた。
「な、何なんだよ!?」
澄斗は段ボール箱を抱えたまま狼狽えている。
唐沢先輩があたし達の後ろで両手を前に突き出し、廊下に手を翳した。
吹き荒れていた突風が次第に止み、廊下に静寂が戻る。
『今のうちに、早く行け!』
「うん」
あたしは唐沢先輩に視線を向け頷いた。
「あー、びっくりした。向こうの窓が開いてるから、突風が入ったのかな。流音、何やってんだよ。帰るぞ」
「わかってるよ。澄斗、その箱絶対に落とさないでね」
「うっせぇな。だったら見てないで、流音も手伝え」
二人がかりで箱を持つ。
美術室のドアがバンッと閉まり、一人取り残された唐沢先輩のことが、気掛かりでならなかった。
校庭を澄斗と一緒に歩く。
誰かに見られているような視線を感じ、振り向くとそこにあったのは……枯れた桜の木だった。
桜の木は根元のあたりが朽ち果て、穴が開いている。
「あの桜の木、何で伐らないのかな」
「澄斗知らないの? 業者が伐採しようとすると、怪我をしたり病気をしたり厄が続き、桜の木の祟りだと恐れられてどの造園業者も請け負わないんだって」
「お前、よく知ってんな」
「ちょっと小耳に挟んだの」
「地獄耳の間違いじゃね?」
「失礼ね。ていうか、珍しいね。澄斗、本橋さんと一緒じゃないんだ」
澄斗は段ボール箱をヨイショと抱え直す。ガシャガシャと額が触れ合う音がし、箱の中から悲鳴が漏れた。
『きゃああー! 痛い! 本当にガサツね。九人のレディが入っているのよ。気をつけなさいよ』
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