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「うん。唐沢先輩も……暫くあたしの家に来ませんか?」


『俺も?』


「深夜壁から抜け出し空を飛べば、外の世界を自由に行き来出きるはずだよ」


『俺はここから出ないよ。もう暫くここで様子を見るつもりだ』


「黒谷君は何をするかわからないよ。本当に火を放つかもしれない。それくらい危険な人物だよ」


『この学園に潜む真の魔物が誰なのか、この目で確かめたいからな』


「唐沢先輩……」


 美術室のドアが開き、あたしは慌てて段ボール箱をガムテープで封印する。


「流音、ここで何やってんの?」


「澄斗……。ちょうどいいとこにきた。あのさ、ちょっと手伝ってよ」


「は? 手伝え?」


「俺はキャンバス取りに来ただけなんだけど」


「お願い。今日だけでいいの。あたしに付き合って」


「付き合うって?」


 あたしは足元の段ボール箱に視線を落とし、ニカッと微笑んでみせる。


「俺にこれを持てと? 中身はなんなんだよ」


「えっと……。画材だよ、画材。卒業生の不要な画材を先生に貰ったの」


 澄斗は段ボール箱を抱え、眉をしかめた。


「重っ……」


「でしょ。か弱い乙女には一人じゃ無理なんだ」


「どこが、か弱い乙女だよ。つうか、これハンパないな」


 澄斗は文句言いつつも、段ボール箱を抱え美術室を出た。


 あたしは唐沢先輩に視線を向ける。


 ――と、同時に行く手を阻むように、ドアの外から激しい突風が吹いた。

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