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 糸が絡まった絡繰り人形みたいに、伊住君の腕の中でジタバタする。


「伊住君……。あたし困る」


「ごめん。唐突過ぎたね。でも僕の気持ちは嘘じゃないから」


 ガタンと音がし、ドアが開く。テーブルの上の写真が、パラパラと飛んだ。


 そこには深々とパーカーを被った黒谷君が立っていた。


「黒谷、どうかしたのか?」


 黒谷君の鋭い眼差しが、あたしを捕らえた。黒谷君はポケットに手を突っ込み何かを掴んだ。


 やっぱり……

 黒谷君はヴァンパイアだ。


 あたしと伊住君を襲う気なんだ。


 思わず身構えたあたし。


 黒谷君はポケットから凶器ではなく、写真を取り出し伊住君に差し出した。


「これ、頼まれていた写真」


「黒谷、サンキュー」


 伊住君は黒谷君から写真を受け取る。


「……それは?」


「これは美術室の壁に掛かっている絵画だよ。同じ絵画なのに微妙に視線や口元が違う気がして、黒谷に連写してもらったんだ」


 伊住君は前回撮影した写真の横に、受け取った写真を数枚並べ計測した。


 同じアングル、同じ絵画。

 それなのに……黒い瞳や口角が数ミリ動いている。


 彼女たちもドジだな。

 きっとまた誰かの悪口でも話していたんだろう。


 油断するから、こんな写真を撮られるんだよ。



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