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「この間……空野君の家に行ったの。その時……本橋さんもいたんだ」


「それがどうかしたの?」


「……あたし、本橋さんに眠らされ襲われた。蝙蝠が部屋に飛び込んできて、気を失ったの。あの蝙蝠はきっと……本橋さんを操っている新種のヴァンパイアだわ」


「あの本橋さんが風見さんを? まさか……。空野は何て言ってるの?」


「澄斗は全部夢だって……。でも夢なんかじゃない。あれは現実よ」


 興奮して叫ぶあたしを宥めるように、伊住君は優しく背中を擦った。


「僕は信じるよ。もしもそれが本当なら、この学園は大変なことになる。一緒に真実を調べよう」


「伊住君、あたしの話を信じてくれるの? 一緒に調べてくれるの?」


「何を聞いても信じるって言っただろう。僕は風見さんの味方だよ」


 伊住君があたしを抱き締めた。男子に抱き締められ、トクトクと鼓動は速まる。


「わ、わ、わ」


 こんな状況で『わ』しか言えないあたし。かなりカッコ悪い。


「前から風見さんのことが気になっていたんだ。空野と付き合っていると思っていたから、告白出来なかった」


「へっ??」


 告白?

 コクハク?


 こんな時に……

 告白ーー!?


「僕は風見さんのことが好きだ」


 伊住君に抱き締められ、突然告白されたあたしの精神状態は、完全に崩壊寸前。

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