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「よく撮れてるね。さすが黒谷だな。見ろよ、眼球や唇が数ミリ動いてる」
伊住君はものさし片手に、顔の歪みを見つけ、黒谷君を誉めちぎった。
「お、同じだよ。写真の角度で微妙に違うように見えるだけだよ。黒谷君の手がぶれただけ」
あたしは伊住君の主張を否定する。ハカセを守ることが出来なかったあたし。唐沢先輩や絵画の美少女は守りたい。
「この絵画は生徒が描いたとされているが、一部の生徒が描いた作品を、何十年もの間、美術室に飾る意味がわからない。こんなものがあるから、変な噂がたつんだ。
近日中に校長先生にこの証拠写真を見せ、処分を求めるつもりなんだ」
「処分……?」
「価値のないホラー紛いの絵画を、放置しておく必要性はないからね」
伊住君の言うことは正論だけど、絵画の中で彼女たちの魂は今も生きている。
もし処分されてしまったら、彼女たちの魂は浮かばれない。二度死んでしまったことになる。
「処分するなんて……。待って、あたしが絵画に描かれた女子生徒の家族に、絵画を返すから」
「家族に返す? 何十年も前に描かれた絵画だよ。女子生徒の家族が今何処にいるのか、健在なのか、それすらもわからないのに? どうやって九人の家族を捜すの?」
「あたしが絵画を責任持って預かる。だから処分しないで」
伊住君と黒谷君が顔を見合せた。
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