【12】疑心暗鬼と義心安危

流音side

106

 ―放課後―


 あたしは新聞部の部室に向かう。


 新聞部の部室は四階の階段を挟んだ右側の一番奥の部屋だ。


 新聞部は生徒会の資料室を部室にしている。


 同階の左側には美術室も化学室もある。美術室にいる唐沢先輩のことが気になりながらも、あたしは新聞部のドアをトントンと叩いた。


 ドアが開き伊住君が顔を見せた。


「風見さん来てくれたんだ。入って」


「……うん」


 初めて入る新聞部の部室。

 壁一面は本棚になっていて、生徒会の資料や様々なファイルが並ぶ。


 狭い室内の中央には長方形のデスクが置かれていた。


「ここ狭いから、椅子はないんだ。新聞の製作には立って作業した方が効率的だからさ」


「そうだよね」


「校内新聞で学校行事や部活の成果を掲載しても、みんな読みもしないだろう。それは学校側がすればいい。僕はインパクトのある新聞作りに心がけているんだ。みんなが知りたいことをより早く記事にする」


「伊住君、凄いね」


 伊住君は以前美術室で撮影した写真を、テーブルの上に順番に並べた。


「前から気になっていたんだ。風見さんの写真に写る黒い影」


 確かにあたしの写真には、黒い影が写り込んでいる。


「これはきっと悪霊だよ。きっと今も、風見さんにとり憑いている」


「悪霊!?」


 あたしは思わず自分の両肩を摩る。


「やめてよ。とり憑くだなんて」


「それともこれは、ヴァンパイアかな」


「ヴァンパイア……」


「風見さんは、神川さんがヴァンパイアに殺されたと思ってるんだよね?」


「……うん。誰も信じないけどね」


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