104
◇
「君、君、大丈夫か?」
体を揺り動かされ、あたしは飛び起きた。
「平沼先生! 助けて!」
思わず、平沼先生にしがみつく。
「どうした? 随分魘されていたようだが、怖い夢でも見たのか」
怖い……夢?
あたしは隣のベッドに視線を向けた。
「平沼先生、隣に寝ていたのは、死んだ神川さんです。神川さんがヴァンパイアに……」
「ヴァンパイア? 隣には誰も寝ていなかったよ」
「誰も……?」
「そんなはずは……。あたし確かに見ました!」
「よほど怖い夢だったようだね。一限目はもう終わったが、もう少し休みますか?」
「……いえ」
ふたつ並ぶベッド。
隣のベッドの上は、布団が畳まれ整然としている。
誰かが寝ていた形跡は感じられない……。
「あたし……教室に帰ります」
「そうか? 体調が悪いなら早退してもいいんだよ。一年A組の担任は、確か柿園先生だったね。柿園先生に連絡しようか?」
「大丈夫です。もう平気ですから……」
保健室を出たあたしは、ふらつきながら教室に向かった。
休み時間、廊下で騒いでいる男子も、廊下で話をしている女子も、みんなヴァンパイアに見える。
疑心暗鬼に陥ったあたしは、誰も信用出来なくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます