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 ◇


「君、君、大丈夫か?」


 体を揺り動かされ、あたしは飛び起きた。


「平沼先生! 助けて!」


 思わず、平沼先生にしがみつく。


「どうした? 随分魘されていたようだが、怖い夢でも見たのか」


 怖い……夢?

 あたしは隣のベッドに視線を向けた。


「平沼先生、隣に寝ていたのは、死んだ神川さんです。神川さんがヴァンパイアに……」


「ヴァンパイア? 隣には誰も寝ていなかったよ」


「誰も……?」


「そんなはずは……。あたし確かに見ました!」


「よほど怖い夢だったようだね。一限目はもう終わったが、もう少し休みますか?」


「……いえ」


 ふたつ並ぶベッド。

 隣のベッドの上は、布団が畳まれ整然としている。


 誰かが寝ていた形跡は感じられない……。


「あたし……教室に帰ります」


「そうか? 体調が悪いなら早退してもいいんだよ。一年A組の担任は、確か柿園先生だったね。柿園先生に連絡しようか?」


「大丈夫です。もう平気ですから……」


 保健室を出たあたしは、ふらつきながら教室に向かった。


 休み時間、廊下で騒いでいる男子も、廊下で話をしている女子も、みんなヴァンパイアに見える。


 疑心暗鬼に陥ったあたしは、誰も信用出来なくなっていた。

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