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「熱はなさそうだね。一応検温して」


「平沼先生、大丈夫です。少し休めば楽になるから……」


「そうか? ベッドは空いているから、ゆっくり休みなさい」


「……はい」


 カーテンで仕切られた簡易ベッド。ベッドは二つあるが、先客がいるようだ。


 あたしに背を向けているのは女子生徒。布団を被り顔が見えないから、誰なのかわからない。


 彼女を起こさないように、ソッと隣のベッドに潜り込み瞼を閉じた。


 昨夜睡眠不足だったせいか、あたしは睡魔に襲われ、うつらうつらと夢の中をさ迷う。


 隣のベッドでギシ……ギシ……と、音がした。


 女子生徒が寝返りでもうったのかな。


 ――ギシギシ……


 ギシギシ……。


 耳障りな金属音……。


 まるで金縛りにあったみたいに、耳は不気味な音を拾っているのに、瞼は開けることが出来ない。


 体を動かそうとしても、体は鉛のように重くて起き上がることが出来ない。


 ――ギシギシ……


 ギシギシ……。


 音がだんだん近ずく。


 何かが体にのし掛かるように重たくて、呼吸が苦しい。


「うっ……うっ……」


 やっとの思いで重い瞼を開いた……。


「きゃあああー……!」


 あたしの体の上に、馬乗りになっていたのは……。


 青白い顔をした……


 神川さん……!?


 神川さんは髪を振り乱し、カッと目を見開き大きく口を開けた。


 そこには血に餓えた、鋭く光る牙があった。

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