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「千秋だって、ヴァンパイアが見たいとか、美術室の幽霊が見たいとか、いつも言ってるくせに」
「それはさ、本当にいるなら逢ってみたいけど、現実にはいないでしょう」
「……いるんだよ。ちゃんといるんだよ」
あたしは千秋の肩を両手で掴む。
「流音、まだ変なこと言ってる。神川さんを殺したのはその幽霊だっていうの?」
「彼らは邪悪なものではないわ。彼らの他に学校を支配しようと目論んでいるものがいるのよ」
「別にも幽霊やヴァンパイアがいるっていうの? もしいるとしたら、誰なのよ?」
「……それは」
「ほら、根拠のない話は慎んだ方がいいよ」
千秋らしくない発言。
誰よりも怪談話が大好物のくせに。
「もう授業が始まっちゃう。あたし教室に戻るね」
千秋はあたしに背を向けた。
「根拠はあるわ。本橋さんだよ。彼女には気をつけて」
保健室のドアの前で、千秋の足が止まった。
「流音、空野君と本橋さんが親しくしていることが不愉快なのはわかるけど、転校してきたばかりの本橋さんをそんな風にいうのはよくないよ。転校生には優しくしないとね」
千秋は振り向きもせず、ドアに手を掛けた。
「千秋! 嘘じゃないよ! 本橋さんは鼠を生きたまま焼却炉に入れたの。残忍だし、それに……」
「たかが鼠でしょう」
「それに……。あたし本橋さんに吸血されそうになったんだから」
「吸血? 本橋さんがヴァンパイアだっていうの? ばかみたい」
「……えっ」
千秋は冷淡な口調であたしを突き放すと、保健室を出て行った。
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