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「そうかな……」
千秋はあたしの味方だと思っていたのに。
保健室に入ると、養護教諭の先生はそこにいなかった。
開け放たれた窓から冷たい風が吹き抜け、パタパタと白いカーテンを揺らしている。
「千秋、あのね。あたし……この間化学準備室で誰かに襲われそうになったんだ」
「えっ!? 化学準備室で? 誰かにって、誰よ!?」
学校の怪談を信じている千秋は、瞳を輝かせた。
「わからないの。顔は見えなかったから。でも……とても人間だとは思えなかった」
「やだぁ、それ噂のヴァンパイアだってこと!? まじなの?」
「もしも……あたしたちのクラスにヴァンパイアが潜んでいるとしたら?」
千秋はあたしの問い掛けに、一瞬目を見開いたが、次の瞬間ゲラゲラと笑い転げた。
「やだな、流音ったら。被害妄想もいいところだよ。確かにこの学校に纏わる怪談話はいくつかあるけど、神川さんが亡くなったのはソレとは無関係だからね」
「そんなこと、どうして言い切れるの? 千秋は怖くないの?」
「流音、あまり変なことばかり言ってると、クラスで孤立するよ」
明るくてひょうきん者の千秋が、いつもと違う表情を見せた。
冷たい眼差し……。
冷たい口調……。
ほんの一瞬……
別人に見えた。
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