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 本橋さんと視線が重なり、昨夜のことを思い出した。


 あれは……

 やっぱり夢じゃない。


 きっと神川さんは……

 本橋さんに襲われたんだ。


 神川さんはこの世にはもういない。


 でもこのクラスの中に、本橋さんに吸血され、ヴァンパイアになってしまった者が、すでに存在しているかもしれない。


 周囲を見渡すと、女子の髪はみんな肩より長いことに気付いた。ショートヘアは千秋だけだ。


 本橋さんは太陽を恐れない新種のヴァンパイア。


 だとしたら……

 犠牲者達もみな、同族のはず……。


 急に怖くなり、みんなが敵に思えた。


「流音どうしたんだよ? 顔色悪いよ」


 澄斗が心配そうに、あたしに視線を向けた。


「流音、体調悪いなら保健室に行った方がいいよ。あたしついて行ってあげる」


 千秋があたしに優しい眼差しを向ける。千秋の首に吸血の痕はない。


 千秋はあたしの親友。

 信頼出来る親友。


「うん。少し休んでくる。千秋……保健室についてきて」


「わかった」


 二人で教室を出た。

 本橋さんが目であたしの姿を追っている。


「どうしたのよ、流音? 最近変だよ。一人言も多いし、鼠の餌付けなんかして、小春も心配してるんだよ」


「あのね……千秋。最近クラスの雰囲気変だよね」


「クラスの雰囲気? 変なのは流音だよ」

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