95
◇
「唐沢先輩! 助けて!」
翌朝、流音は血相を変えて美術室に飛び込んで来た。
『朝から騒々しい奴だな。何事だ』
「あたし、昨日もう少しで殺されるところだったの」
『殺される? 誰に?』
「本橋さんだよ。昨日澄斗の家に行って三人でご飯を食べたの。本橋さんが出してくれたオレンジジュースを飲んだら、急に眠くなって……。そしたら本橋さんが豹変したんだ」
『豹変? まさか……吸血されたのか!?』
流音は首を左右に振り、首筋を見せた。白くて美しい肌。傷ひとつない。
「蝙蝠が部屋に飛び込んで来たんだ。そのあとは……覚えてない」
『何もされなかったのか?』
「……うん。蝙蝠は本橋さんの仲間だったのかな。意識が朦朧としていたから、黒いシルエットしか見えなかった」
『そいつの顔を見てないのか?』
「……うん」
『本橋の仲間だとしたら、流音も空野も今頃はヴァンパイアになってるよ』
「……そうだよね。もしかしたら、澄斗のお母さんが帰宅して、諦めて逃げたのかもしれない」
『それもあり得るな』
「本橋さんは……あたしを狙ってる。澄斗ではなくあたしを……」
『空野ではなく流音を狙う理由は……?』
もしかしたら……
流音が俺の呪いを解く、十人目の少女だということを知ってのことか!?
『本橋の狙いは……』
校庭を見下ろす。
枯れた桜の木が黒い霧に包まれ不気味に揺れた。
『流音、本橋と2人きりになってはいけない。いいね』
「……うん」
『何かあったら、ここに逃げ込め。俺が君を守る』
「唐沢先輩……」
『君は俺の……』
流音は呪いを解くためには必要不可欠な存在。
十人の美少女の魂を絵画に封じ込めなければ、俺の呪いは永久に解けない。
でも、彼女を守りたいのは、本当にそれだけの理由なのか……。
自問自答しながら、俺は流音を見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます