ジュナside

94

『ジュナ様、眠れないのですか?』


『晶子か、俺のことは気にせず、休むといい』


『私はずっとジュナ様と一緒でございます』


『可愛いことを言ってくれるな。なぁ晶子、ハカセは本当に死んでしまったのだろうか』


『寂しくなりましたね』


 俺はまだハカセの死を受け入れることが出来ない。


 サワサワと夜風に揺れる校庭の木。


 一本だけ枯れた桜の木は、朽ち果ててもなお、そこに立っている。


 何度となく植木屋が訪れ、伐採しようと試みたが、チェーンソーや鋸を取り出した途端、アクシデントが起きた。


 職人が怪我をしたり、心筋梗塞や脳卒中で倒れたり、噂はすぐに広がり、桜の木の祟りだとどの業者も伐採を請け負わなくなった。


 まるで屍がこの学校を見上げるように、あの桜の木は立っている。


 あの場所は……

 地縛霊を地底深くに封じ込めた場所に違いない。


 俺の封印が決壊した……。

 だとしたら、悪霊と化した地縛霊が地底から這い出したかもしれない……。


 不吉な予感がする。


 何かが起こりそうな……。

 不吉な予感が……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る