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どうして澄斗は、そんなに冷静なの?
あたしと澄斗は、本橋さんに睡眠薬を飲まされて、本橋さんは本性を現した。
「澄斗、あたし……どうしてここに泊まってるの? おじさんとおばさんは?」
「父さんは出張。母さんは部屋で寝てるよ。流音は夕食のあとソファーでうたた寝したんだよ。本橋さんも今夜両親が不在みたいだから、お節介な母さんが泊まりなさいって」
あたし、おばさんが帰宅したことも気付かなかった。
あたし……
うたた寝したの?
あれは夢……?
澄斗は何も異変を感じていない。
「流音をベッドに運ぶの大変だったんだよ。俺は女子にベッドを占領されリビングで寝てるんだ。早く部屋に戻れば」
「……っ」
部屋には戻りたくないよ。
澄斗はタオルで髪を拭きながら、あたしを見下ろした。
「澄斗、首を見せて」
「は?」
あたしはタオルを奪い取り、澄斗の首を念入りに見る。
少し赤く腫れているが、牙に咬まれたような傷はない。
「……本当に虫刺されだったんだ」
「当たり前だろ。何だと思ってたんだよ」
「澄斗、あたしの首を見て」
「流音の? 首がどうかしたのか?」
「あたしの首……傷……付いてない?」
「傷? ないよ。流音まさか本当にヴァンパイアがいると思ってんの? どうかしてるよ」
澄斗はヴァンパイアじゃない。澄斗は……澄斗は……。
恐怖から解放され、涙が滲む。
「なに泣いてんだよ。何か飲む? 少し落ち着け」
澄斗はあたしをリビングに連れて行き、オレンジジュースをグラスに注ぐ。
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