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「くだらねぇ。伸びてねぇし」
あたしを睨み付けた澄斗。
本橋さんにヘラヘラして、本当に気持ち悪い。
「あたし、お邪魔だったかな」
「やだ風見さん。そんなことないよ。風見さんは空野君の幼なじみだもの。あたしも仲良くなりたいわ」
嘘ばっか。
「本橋さんは好意的なのに、何で流音は敵意剥き出しなんだよ。お前、その尖った性格なんとかしろよな」
「ほっといてよ。あたしは……敵意なんて」
持ってきたフライドチキンを掴み、パクリとかぶりつく。
澄斗は目の前に置かれたサンドイッチに手を伸ばす。
「はい。オレンジジュース」
本橋さんがテーブルにグラスを三つ置いた。
「ありがとう。本橋さんも座りなよ」
「うん」
本橋さんは澄斗の隣に平然と座る。まるでカレカノだ。
澄斗はグラスを掴み、ごくごくとジュースを飲み干した。
あたしも目の前のグラスを掴み、ごくごくと飲み干す。果汁百パーセント、ちょっと苦い。
三十分後、テレビを見ながら食事をしていた澄斗が、コクンコクンと頭を垂れた。
「やだ、澄斗。子供みたいに食べながら寝ないでよ」
「……急に……眠気が……。ごめん」
澄斗はテーブルに突っ伏し、スースーと寝息を立てた。
「澄斗? 澄斗ってば……」
立ち上がろうとすると、突然視界が歪んだ。蜃気楼のように、室内がゆらゆらと揺れている。
眠っている澄斗も本橋さんも二重にも、三重にも見えた。目を開けていることも辛い……。
「あたし……」
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