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「本橋さんもいるんだ。上がれよ」


「言われなくても上がりますよ」


「お前は本当に可愛くねぇな」


 あたしを可愛げのない女にしているのは、澄斗だからね。


 澄斗と一緒にリビングに入ると、本橋さんはおばさんのエプロンをつけて、キッチンに立っていた。


「風見さんいらっしゃい」


 まるで新婚家庭の新妻気取りだ。


「おばさん遅くなるみたいだから、夕食作ってたの」


「夕食なら作らなくていいよ。流音のお母さんがフライドチキンやポテトくれたし、俺の母さんが作ったサンドイッチやサラダが冷蔵庫に入ってっから」


「なんだ、そうなの? せっかく手料理振る舞おうと思ったのにな」


 本橋さんはエプロンをつけたまま、冷蔵庫の扉を開け、サンドイッチやサラダを取り出し、ペットボトルのジュースも取り出した。


「空野君、このジュースでいい?」


「うん、ありがとう」


「今日はホームパーティーみたいだね。楽しいな」


 澄斗の前で、可愛い笑顔を見せる本橋さん。生きたまま鼠を焼却炉に放り投げた同一人物とは思えない。


「少し早いけど、温かい内に食べようか」


「うん。空野君先に食べてて。あたし、ジュース持っていくね」


 キッチンでグラスにジュースを注ぐ本橋さん。


 あたしは澄斗を睨み付ける。


「何だよ。目付き悪いな」


「澄斗の鼻の下、パンツのゴムみたいにビヨーンって伸びてるよ」

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