88
「本橋さんもいるんだ。上がれよ」
「言われなくても上がりますよ」
「お前は本当に可愛くねぇな」
あたしを可愛げのない女にしているのは、澄斗だからね。
澄斗と一緒にリビングに入ると、本橋さんはおばさんのエプロンをつけて、キッチンに立っていた。
「風見さんいらっしゃい」
まるで新婚家庭の新妻気取りだ。
「おばさん遅くなるみたいだから、夕食作ってたの」
「夕食なら作らなくていいよ。流音のお母さんがフライドチキンやポテトくれたし、俺の母さんが作ったサンドイッチやサラダが冷蔵庫に入ってっから」
「なんだ、そうなの? せっかく手料理振る舞おうと思ったのにな」
本橋さんはエプロンをつけたまま、冷蔵庫の扉を開け、サンドイッチやサラダを取り出し、ペットボトルのジュースも取り出した。
「空野君、このジュースでいい?」
「うん、ありがとう」
「今日はホームパーティーみたいだね。楽しいな」
澄斗の前で、可愛い笑顔を見せる本橋さん。生きたまま鼠を焼却炉に放り投げた同一人物とは思えない。
「少し早いけど、温かい内に食べようか」
「うん。空野君先に食べてて。あたし、ジュース持っていくね」
キッチンでグラスにジュースを注ぐ本橋さん。
あたしは澄斗を睨み付ける。
「何だよ。目付き悪いな」
「澄斗の鼻の下、パンツのゴムみたいにビヨーンって伸びてるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます