【10】鬼気と危機

流音side

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 絶対に行かない!


 そう決めていたのに、あたしは澄斗の家の玄関前に立っている。


 お節介なママが、フライドチキンやポテトを大量に作り、お土産つきであたしを送り出したのだ。


「本橋さんが今夜一人なら、家に泊めてあげなさい。女の子が澄斗君の部屋に泊まるわけにはいかないでしょう」


 それはそうだけどさ。


 ヴァンパイアかもしれない本橋さんと、同じ部屋で寝るのはあまりにも怖い。


 でも……

 証拠を掴むチャンスかも……。


 だけど、一歩間違えたらあたしもヴァンパイアだ……。


 チャイムを鳴らせず、動物園の熊みたいに、玄関前をうろうろする。


 澄斗の家のドアが、勢いよく開いた。


「お前さ、何やってんの? 防犯用のモニターにうろうろしてる姿が、映っててウザいんだけど。お前は動物園のゴリラか」


「別にうろうろしてないし。今チャイム鳴らそうと思ってたの。これ、ママから」


 あたしはフライドチキンとポテトの乗ったお皿を差し出す。


「わぁ、うまそう。おばさんの作るチキン超うまいんだよな。サンキュー」


 澄斗はご機嫌でお皿を受け取る。玄関には本橋さんの靴。


 男は単純な生き物だ。食べ物と美少女が揃うとこうもテンションが上がる。


「気持ち悪っ」


「は? お前、胃の調子が悪いのか?」


 そうじゃなくて。

 ヘラヘラしてる澄斗が気持ち悪いんだよ。

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