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 怒りが鎮まり、風がやむ。

 黒谷君はあたしを真っ直ぐ見つめた。


「風見がやったのか? それとも……美術室に棲みついている幽霊……」


「窓が開いてるから、風が入ったのよ。変なこと言わないで」


 黒谷君は周囲を見渡し、美術室を出て行った。


 全身から力が抜け、激しい脱力感に襲われ床にへたり込む。


『流音、大丈夫か?』


「全身がだるいの。どうしたのかな……」


『むやみに霊能力を放つからだ』


「霊能力……? さっきの突風は唐沢先輩が起こしたんでしょう。あたしに霊能力なんてない」


『まだわからないのか。君は潜在的に強い霊能力を持っている。その力は怒りから突風をも巻き起こす。多分人を吹き飛ばすくらいの力はあるだろう』


「……うそっ。あたしがあの風を……?」


『そうだ。俺も驚いている。まさかそこまでの力があるとはな』


「だから……こんなに全身がだるいの? 全速力で走ったあとみたい……」


『そうだよ。パワーを出すと誰でも疲れるものだ』


「あたしに……あんな力が……。あたし……人間じゃないの?」


『君は人間だよ。神に力を与えられた特別な人間だよ』


 あたしが特別な人間……。


 今まで考えたこともなかった。


『大きく深呼吸をして。そうすれば脈も落ち着き、じきに体は戻る。何度か経験すれば、次第に脱力感や疲労は感じなくなるだろう』


「自分が怖い……」


『怖がることはない。恐れることもない。悪用しなければ、今までと何も変わらない』


 唐沢先輩の言葉に、気持ちが少し落ち着いた。

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