【9】獲物と餌者

流音side

78

 ―職員室―


「柿園先生、この鼠焼却炉で処分しましょうか」


「そうね。駆除するにはそうするしかないかも。でもそんな残酷なこと先生には出来ないわ。用務員さんに処分は頼むから、北校舎のゴミ捨て場に置いといてくれないかな」


「柿園先生、あたしが焼却します」


「本橋さんが? あなた平気なの? 授業が始まる前に出来る?」


「はい」


「だったらお願いね。先生、鼠とか虫とか苦手なのよ」


「わかりました」


 北校舎裏のゴミ捨て場……。


 あたしは先回りして、ゴミ捨て場に向かう。


 ハカセを助けないと……。

 本橋さんから、奪い返さないと……。


 いい策なんて、思い浮かばない。


 でも……

 助けないと……。


 ―北校舎裏、焼却炉―


 日当たりは悪く、じめじめとした薄暗い場所。ゴミや段ボールが無造作に積まれ、生徒の姿は当然ない。


 校舎の陰に隠れていると、本橋さんが姿を現した。鼠捕りの中で、キーキーと鼠は悲鳴を上げ暴れている。


「残念ね、ここは陽が当たらないわ。焼却炉に投げ込まなくとも、あなたは灰になれたのに。アハハハハ」


 鼠は体から血を流し、キーキー暴れるだけだ。


 本橋さんは不気味な笑みを浮かべ、焼却炉の蓋を開けた。


「待って! その鼠はあたしの……」


 本橋さんがあたしを睨み付けた。


「鼠がペットだなんて、みえすいた嘘を吐かないで」


 本橋さんは私の目の前で、焼却炉に火を放った。

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